ブナの森、渓流沿いに林道が延びている。
雨後のこととて道いっぱいに水溜りが覆う箇所、轍の跡で泥が溜まった処などが頻繁に現れた。
この泥濘んだ林道をゆっくりゆっくり1時間近くかけて登り、やっと目的地に到着。
今日は晴天。
谿が明るい、深呼吸したくなるような渓流だ。
勾配は緩く流れは浅めで、白い底石を舐めるように伝う澄んだ水は碧い。
両岸は河畔林がトンネルを成し、魚影が見える透明な流れには木漏れ日が適度な陰影を作り出している。
蝉時雨と水音しかない静かなこの川をただ一人で釣り上がった。
岩陰からフライに飛び出すイワナの姿もくっきりのサイトフィッシングだ。
楽しすぎる!
釣れるのは全てニッコウイワナ。
サイズは7寸(約21cm)クラスが多いが、ここのイワナは白い底石に紛れ込むように色白。
この妖精のような美しいイワナたちに魅せられた。
釣り人には散々攻められたはずで警戒心も強いので、小さなポイントも丹念に狙うとイワナが飛び出す。
ひとしきり釣りを堪能したら、岩に腰を下ろしておにぎりを頬張り、お茶を飲む。
水辺の丸石の上部、帽子をのせたような苔草をクリアな水音が包んでいる…
釣行の締めくくりはこの一尾。
なんと美しい白い妖精さん。
別アングルでもう一枚。
ありがとう、もう何もいらない。
釣りは午前中までと決めていた。
釣った白いイワナは7尾。
水も樹木も空気も全てが美しかった。
曲がりなりにも長年フライフィッシングをやっていると、大好きな渓相、対象魚、そしてどう釣るかなどなど…色々こだわりや自分なりのスタイルってやつができてくる。
それらが程々満たされた時、釣り人は噛み締めるような幸せな心地になる。
ありがとうイワナたち。この渓に来て本当に良かった。
ありがとう!お世話になった方々、感謝は尽きない。
再会を期してゆっくりゆっくり山を下りた。