雨の日光湯川、38年目のリベンジ

雨の日光湯川、38年目のリベンジ

長く釣りをやってると心に残る釣行というものがいくつもあるが、今回のそれは格別だった。
**********
あの風景はもう遠い記憶の彼方。
20代の最後、妻と一緒に日光湯川へ行った。
台風接近とてざんざん振りの大雨で、青木橋で増水した水面を見下ろしながら手も足も出なかった。2pcsのフライロッドを繋ぐことすらないまま川を後にしたのだ。
それを最後に湯川へ釣りに行くことはなかった。

昨年末、古い釣友が湯川に行ってるとのこと。そのブルック話を聞くうちに、久しぶりに行ってみよう、リベンジしようと火がついた。
釣友も同行してくれるとのこと。
梅雨の後半、少々の雨は覚悟の上で7/9 金曜日と決めた。

夜明けの高速道は霧雨で、雨雲レーダーによるとその後もずっと雨が止む気配はない。
しかし今回はやるぞと意気込んだ。
ただし、入渓点は赤沼茶屋からの長い道程は避け、北の湯滝からへと変更した。
(結果的にこれが功を奏したのだが)

<湯滝下から前半の部>
茶店の前から整備された木道をたどり川へ下る。
右側には数十メートルの落差をゴーゴーと水飛沫を上げている壮観な湯滝。
この湯滝下は有名な一級ポイント。
先ずは本日の武運を祈念して釣友N氏と記念撮影。(いかにも怪しげな…)

左:numassan、右:N氏

湯の湖から落ちてくるホンマス、レイクなどが潜んでいるとの前情報に期待が膨らむ。
今回のロッドはScott G2 #3 8’4″、ラインはSA DT3F、増水かげんと釣り下る状況を考えて先ずはニンフのカディスピューパを結ぶ。

右岸側で開始直後の様子をN氏が撮影してくださった。

左岸側ではそのN氏も準備に余念がない。

そして早々にブルックがヒット、これではやる気持ちが落ち着いた。

あろうことか続いて念願のホンマスもヒット。
ホンマスは狙って釣れるものではなく湯の湖から落ちてきて、たまたまそこにいた天からの授かりモノ。
29cmで完璧なシルバーボディ、大きい尾鰭。サクラマスという説もあるがその通りシルバーボディの体側にはうっすらパーマークも見てとれる。
ラッキーと言うしかない!ありがとう。

この湯滝下、魚影は濃く粘ればまだまだ釣れてツ抜けそうだがもう結構、大満足。
どんどん釣り下ろう。
ここからはしばし密度の濃い森の中をゆったりと縫うように蛇行する流れとなる。
70メートル先には先行のフライマン、こちらはN氏と交互だ。
先行者がドライで叩いた後でもあり、小雨が水面を叩いている状況、ドライは不利とみてWetのピーターロス#14を結ぶ。
各カーブではほぼアタリもあり、魚影は濃いと思われる。ただしアベレージサイズは17〜23cmといったところ。

奥の倒木手前でヒット!

下るにしたがって徐々に開けてロッドも振りやすくなる。
先行者が垣間見えるので、常に50m以上の間隔を保ってゆっくり釣り下るようにした。
釣れるのはすべてブルック。ここの個体は色が黒く黄色とピンクの斑点が鮮やかで腹がオレンジ味の強い黄色、まさに黒い宝石。

 

 

 

自撮りしてみました

それにしても、張り出した草木や倒木、大小の岩石、苔むしたそれらは雨に濡れ、息をのむほど美しい。
どんな名人の盆栽や山水の庭も及ばないだろう、この天然の造形美は絶品。
1902、1904年にグラバー氏と助手のハロルド・パーレット氏がブルックを放流したのが自然繁殖の起源と言われているが、彼らは北米の美しい渓流を想い、湯川に似合っていると考えて放流したに違いない。
100年以上も連綿として生命を繋いできたブルックたち。
多くのフライフィッシャーが憧れ、大切に扱ってきたおかげなのだと改めてこの聖地に敬意を表したい。

雨が徐々に強くなっている。
もう着ぶくれたレインジャケットはぐっしょり、それでも気温は20℃くらいなので蒸し暑さはないのがありがたい。
ちょいと開けたエリアに来た。空が広く見えるこの付近の景観のなんと美しいことか!
ロッドを置いてしばし撮影、そして一服。
さて再開。
ゆるく長い駆け上がりのその段差の下を覗った。ここには絶対いるハズ…
必ずサカナが着いてるだろうと狙い、ピーターロスをスイングさせて送り込むと一発!
今日一のズドンとくる手応えとともに激しい水飛沫、魚体がもんどり打った瞬間赤く見えたボディ。
あぁぁこれはニジマスだなと予想したが引きが強く、浮かせると、ヒレの朱色と白いラインが目に飛び込んできた。
おっ、これはブルックだ。

今日一の泣き尺ブルック
リリース前、水にたたずむブルック

惜しくも尺には届かなかったが、ふくよかな美ボディのナイス・ブルック!
ネットに横たえ、もう見惚れた。
うれしい、なんという幸運。リベンジなる!

じっくり撮影し、リリース。
しばらくぼーっとしていたが、ふっと先を見ると先行のフライマンさんが粘っておられる。
ご挨拶に行き、ドライでの状況をお伺いした。
毎週のように通っているが、今日は厳しいとのこと。
ちょうどそこの倒木脇で何度も出るけどフッキングしないので粘っているとのこと。
私のWet状況もご説明するとフライを見せて欲しいと請われたので、小型のピーターロスを見ていただいた。
意外にも小さいですね〜!
Wetは持っていない、ドライオンリーなので新鮮でしたとのお言葉。ありがとうございました。

ぼちぼち12時。ここまでで約3時間経過。
追いついてきたN氏にも報告し、倒木に二人並んで腰を下ろしておにぎりランチ。
コンビニのおにぎりだが、とても美味しゅうございました。(笑)

<後半の部>
もうミッション完了の気分なので、後半はペースを上げようと下るが、雨脚もさらに強くなっている。
ほどなく小滝。
ポツポツと追加、飽きない程度に釣れる。
N氏が背後から撮影してくださった。
いい雰囲気!被写体の自分が言うのも恐縮ですが、絵になるな〜(自画自賛 ^_^;)

湯川に溶け込んだ感、満点!

ラストスパート…

 

ここから下はさらに川幅も拡がり釣りやすそうだが、途中崖崩れもあり、もういいかな〜

8尾目となる最後のブルックを釣ったところで納竿。
N氏はというとドライにチェンジして爆釣中でした〜

果敢に攻めているN氏

何度か通っているN氏は軽くツ抜けたようだ。
こんなに釣り人がいないのは初めてとのこと。(我々以外は二人会っただけ)
そしてこんなに釣れたのも初めてと笑った。

R120号〜いろは坂をゆっくり下る。
耳がツーンときたのはさすが標高1460m。
帰宅して妻に写真を見せて報告。
懐かしい戦場ヶ原〜湯川、そして休憩した青木橋の思い出。
今日唯一の心残りはあの青木橋まで行けなかったこと。
いいさ、今度は妻を連れて橋を見に行こう。
冷えたビールがもう最高だった!

釣友のNさん、大変お世話になり、ありがとうございました。Nさんの一言で湯川に来ることが叶いリベンジが果たせました。この場を借りて、重ねて御礼申し上げます。また行きましょう!