モノクロームの一枚の写真。
写ルンです全盛のこの頃、あえてクオリティにこだわって撮ってくれた。
1986年(たぶん)の私、33歳。
芦ノ湖 湖尻のキャンプ場前のシャローでウェーディングしているところを友人のS氏に撮影してもらったものだ…もう30年以上も昔のことになってしまった。
その5年くらい前からフライフィッシング(以下、FF)を始めて、ほとんど湖通いだった。
初めてトラウトとコンタクトしたのは12月の雪降る本栖湖。
ロッドはフェンウィック ボロンXに#6WFラインだったと思う。
ホワイトのマラブーリーチをキャスト後、カウントダウンしてからラインをたぐっているとモゾモゾ、ゴソゴソと手応え…藻に絡んだ??
それがサカナのバイトとは知らず、どうしていいか分からないでいると、ドーンとデカイのが15m先で跳ねて、ラインはふっと軽くなり終わった。
最初で最後の本栖ブラウントラウトだった。
Beginner’s Luck!
アワセるということをまだ知らなかった(爆笑)
その後はもっぱら芦ノ湖通い。
大してでかくもないニジマスを釣っていた。
冒頭の一枚はそのころの芦ノ湖での写真。
学生時代の仲間達と幼い長女を連れてキャンプ場で寛ぎ、コーヒーを飲み、娘の面倒は妻に託して私一人がロッドを振った。
その時間帯、サカナは回って来ず釣れなかった。
この写真を撮ってくれたS氏は、写真の専門学校を出ただけあって釣行写真に意欲を示し、これ以降FFにハマることとなった。
彼はとりわけ渓流が好きで、その頃から渓流に関心が移っていた私は、何度も一緒に釣行した。
特に印象に残るのは伊豆の川でアマゴを釣ったことだ。
二人で渓流への思いを膨らませていた矢先、あの忌まわしい交通事故で突如帰らぬ人となった。
涙がとめどなく流れた。
この写真を撮ってくれた翌年の夏の出来事。
デジカメなど無い時代、彼がプリントしてくれた貴重なこの一枚は額に入れ、事務所のデスク横にずっと掛かっている。