顔振峠(こうぶりとうげ)・・・Wikiによれば、奥武蔵の東部、埼玉県飯能市と越生町にある峠である。標高500m。峠には茶屋があり、奥武蔵グリーンラインや関東ふれあいの道の休憩場所として賑わう。峠から東に徒歩10分ほどのところに展望台があり、晴れた日には新宿の高層ビルなどが見渡せる。
名前の由来だが、峠にある案内板によると、平安時代、源義経が京落ちで奥州へ逃れる際、あまりの絶景に何度も振り返ったため、また、その際のお供の武蔵坊弁慶があまりの急坂に顔を振りながら登った等が名前の由来になったと説明されている。
この「顔振峠」から尾根道を約5時間の道を夫婦で歩いた。
GW序盤の爽やかな一日、以前から夫婦で行ってみたいと話していた「顔振峠」へ向かった。
秩父手前の吾野駅で下車し、山裾の集落をのんびり歩く。小さな川にはカワムツが群れており、初夏を思わせる陽射しにシャツ一枚の軽装が心地よい。
程なく道は登り坂となり、朝早く登ったハイカーがポツポツ降りてくる。
山道のあちらこちらにはシャガが今を盛りと咲き誇っている。
勾配が急になり、道幅もやっとすれ違える程度。
汗が滴り落ちる。
「日陰をひろうてシャガの道」
ちょっと休憩して、持参の水と巻きずしを頬張る。酢飯の甘酸っぱい味が口中に広がり美味い!
こんなに味わい深い巻きずしは初めて、ゆっくり噛んで楽しんだ。
さあ、元気出して峠を目指そう!妻も元気に前後しつつ登る。
後300m弱で頂上という斜面。
ここは「顔振峠」の案内ポスターなどで見覚えのある風景だ。
遠くに広がる山々、左手の富士山は雲に覆われて見えないが、右手の三角、武甲山は青いシルエットで分かる。
これを見たかった!
なるほど義経も振り返るはず。
ウフフ♪ いい眺めだ。
峠に着くと茶屋が3軒。
斜面にせり出した平九郎茶屋に入った。この茶屋名は渋沢平九郎からきているそうだ。知らない名だったので調べてみた。平九郎について以下簡単に引用すると、
幕末の佐幕派志士で、渋沢栄一の見立養子(栄一の妻の弟)。彰義隊から別れた振武軍の参謀として飯能戦争に敗れ、黒山まで逃れたが、官軍兵士と遭遇して争い、自決した。
飯能戦争とは、慶応4年(1868年)幕末期の戦乱。この事変をもう少し詳しく知りたい方は、こちら↓をご参照ください。
http://homepage3.nifty.com/youzantei/mitisirube/heikurou.html
この茶屋の室外の一角に座り、自動販売機で缶コーヒーを買った。(他は全て売切れw)
妻と一緒におにぎりを頬張り、水筒の水で喉を潤す。腹ぺこなので最高に旨い!
やがて数名の方が賑やかに入って来られ私達のテーブルにも女性お二人が相席した。
目が不自由なランナーと伴走者のコンビらしい。注文したビールをゴクゴクっと旨そうに飲み、私達に話しかけてくれた。
この峠にはよく練習で走りに来られるそうで、この茶屋は親切で気持ちいいですよ〜とのこと。
私達のルートとは違う舗装路とはいえ結構な勾配であろう。
すごいですね〜などと話してたら、新鮮なタケノコ煮が山盛りになってランナーさんのビールの前に出された。
ひぇっー!たまらん。
そのタケノコを見てたらもう口の中にあの食感が広がり我慢できなくなってきた。
こちらは山歩きなので我慢の缶コーヒーだが、タケノコだけは食べたい!
妻もそう思ったらしく、◯◯餅と併せて注文に席を立った。
テーブルに戻り言うには、◯◯餅は売切れで、あのタケノコ煮はサービスだそうで、笑いながら一皿どうぞとくださったそうな。
なるほど親切なお店に違いない。さっそく箸をつけてみた。
美味い!たまりません。
ああビール飲みたい…。
(写真撮るべきだった、すみません)
「風ぬけて山並とほく空あおく」
さあ、ゆっくりできたから先へ進もう。まだ2/3の行程が待っている。茶屋のおばちゃんに丁寧にお礼を言って腰を上げ店先の道へ。
ゆるゆると下り坂。
30m先を夫婦連れが歩いている。こちらも同じペースで進む。
やがてそのお二人が立ち止まって指差しながら遠くを眺めているので追いついた。
眺めの先はと見ると、木立ちの間に都心部が垣間見られた。
ご挨拶して私達もしばし休憩。
東吾野駅へ向かいたいのですがと話すと、この道で大丈夫ですよと答えてくれてお二人も同方向のよし。
しかもベテランさんらしく熊鈴もぶら下げておられた。
これは有り難い!初めての山道なので、着いて行きますのでよろしくお願いしますとお伝えした。
諏訪神社を経て十二曲りにかかると、急な坂道のアップダウンの連続。
しかも木の根があらわになったり、岩面があったりと結構なキツさ。
前を進むお二人はさすがでスピードも一定、滑らないように気をつけつつ私達も懸命に食い下がる(笑)。
私の靴はダナーのトレッキングシューズでほぼ完璧な足ごしらえだが、妻のそれは普通のスニーカー、大したもんだと改めて妻の体力を見直した。
「ふんばって肩で息する十二折れ」
長い山道。
途中で舗装路に出るポイントもあり、もうこの歩き易い道を下ればいいのかな?と思ったらまた登り道。
きっつーい!
でも迷いそうな分岐点も先導のベテランさんのおかげで的確に進めた。
エビガ坂を抜けて、やっとユガテという集落に着いた。
畑があり、公衆トイレに憩いのベンチまである。ここは山歩きさんの休憩場所のようです。
先のご夫婦もベンチの一つに腰を下ろし水筒や飴で憩い中。
私達も最後の休憩用に取っておいたチョコ「タケノコの里」を取り出しお二人にお裾分けしたら、逆に塩分補給飴を手渡してくれた。
そして、ここからはもう楽で東吾野駅も近いですよと教えてくださった。それでも標識によれば3kmはある。
でももうきつい山道から解放されたと思うとやれやれと安堵。
最後もご夫婦の後を着いて歩き出した。
小さな川沿いを下る道。
この川、虎秀川という。
ごつい名の割りに流れは細い。
おお、いい渓相だなぁと覗き込むと、いるいるカワムツがうじゃうじゃ。
20cmに満たないヤマメも浮いていた。(ただし禁漁区)
そんな流れに目をやりながら歩くものだから、先導のご夫婦の姿はすぐに見えなくなった。
明るいうちに下って来れてよかったネー、あっデカいカワムツだ!
ついに国道299号線を横切るとそこは西武線路。
やったーと思う間もなく上りの電車が接近してきた音が響き、ホームへ走った。
間一髪 セーーーフ!
最後のダッシュ、キツかったけど乗れて良かったー。
行楽客で混雑の車内、夕方の高麗川を眺めつつ飯能へ向かった。
この記事を最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
また行けるかどうか分かりません。
だから動けるうちに行っておきたかった顔振峠。
満足の一日でした。